日本からの参加例

CMB-INFLATE (岡山大学・東京大学・東海国立大学機構・高エネルギー加速器研究機構)

CMB-INFLATE – Advanced Methodologies for Next Generation Large Scale CMB Polarization Analysis

 

プロジェクトの目的

このプロジェクトでは、宇宙の最古の光である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光を大角度スケールで観測しインフレーションの証拠となる「原始重力波」を検出することを目標としています。

宇宙起源の痕跡を探し当てる

宇宙の熱いビックバンより前のインフレーションと呼ばれる急激な空間の膨張期に、量子力学的「ゆらぎ」が引き延ばされ、それが種となって現在の宇宙の構造が生成された、という仮説があります。その仮説を直接裏付けるためには、CMBの大角度スケール偏光観測により、宇宙初期に発生した「原始重力波」の微弱な信号を捉える必要があります。

日欧協力について

岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 教授 石野 宏和 様

研究者とURAとの共同作業

私がH2020 MSCA Staff Exchanges Programmeを知ったのは、URA*1のベルナール教授(岡山大学)に提案されたことがきっかけでした。以前から研究協力をしていたパリ大学のパタンソン教授(写真左)もプロジェクトのコンセプトや目標に賛同し、EU側のコーディネーターを務めていただける事になりました。その後も日欧を行き来して何度も計画を練り直し応募したところ2021年開始のプロジェクトとして採択されました。岡山大学側は「大学改革促進のための国際研究拠点形成プログラム(RECTOR)」にも採択されていたため相互に交流資金を提供し合う体制が整い、共著論文の執筆が大きく促進されました。

本プロジェクトには、岡山大学、東京大学 国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、名古屋大学、高エネルギー加速器研究機構の日本からの4機関を含む18機関が参加しています。本プロジェクトに関わる全ての機関が協力し、装置のシミュレーションと解析ツールの開発を進めています。また、EUの過去の衛星(Planck)の観測データ解析を行った経験を持つ研究者が来日し共同作業を行うことで、技術面と知識面での相互協力が実現しました。本プロジェクトは、2030年代の次世代衛星(LiteBIRD*2等)に参加することを目指します。

研究とスタッフ交流
ホライズン2020の様に多国間による国際共同研究では、意見を一つにまとめることは容易ではありません。特にヨーロッパでは自分の意見をしっかり持ち、発信しなければならないという文化が根付いています。EU各国からも人が集まるため英語が共通言語になります。実際に渡欧した学生も、帰国後は積極的に意見を主張出来るまでに成長しました。特に対面でのディスカッションは学生たちにとってコミュニケーション能力を磨く貴重な経験となっています。岡山大学を含む日本国内の研究機関から、多数の博士前期・後期課程の学生が1か月以上ヨーロッパに赴き、経験豊富な研究者に指導を受けながら研究を進めました。

このプロジェクトを通じてCMB 偏光データの革新的な解析手法の開発に取り組もうと賛同頂いた多くの研究者による国際的科学技術コミュニティが出来ました。今後の実証実験を通じて大規模かつ高精度なデータを取得し目標に近づくことを期待しています。

*1 University Research Administrator
*2 LiteBIRD 衛星計画

Project Details

Project Participants

Coordination:

  • UNIVERSITE PARIS CITE (FRANCE)

Organisations related to the project:

  • CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE CNRS (FRANCE)
  • UNIVERSITA DEGLI STUDI DI FERRARA (ITALY)
  • MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FORDERUNG DER WISSENSCHAFTEN EV (GERMANY)
  • STOCKHOLMS UNIVERSITET (SWEDEN)
  • SCUOLA INTERNAZIONALE SUPERIORE DI STUDI AVANZATI DI TRIESTE (ITALY)
  • UNIVERSITA DEGLI STUDI DI ROMA LA SAPIENZA (ITALY)
  • UNIVERSITETET I OSLO (NORWAY)
  • CARDIFF UNIVERSITY (UNITED KINGDOM)
  • AGENCIA ESTATAL CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS (SPAIN)
  • HASKOLI ISLANDS (ICELAND)
  • NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION OKAYAMA DAIGAKU (JAPAN)
  • TRUONG DAI HOC KHOA HOC VA CONG NGHE HA NOI (VIETNAM)
  • TOKAI NATIONAL HIGHER EDUCATION AND RESEARCH SYSTEM, NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION (JAPAN)
  • NATIONAL UNIVERSITY CORPORATION THE UNIVERSITY OF TOKYO (JAPAN)
  • THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA (UNITED STATES)
  • THE GOVERNING COUNCIL OF THE UNIVERSITY OF TORONTO (CANADA)
  • INTER-UNIVERSITY RESEARCH INSTITUTE CORPORATION, HIGH ENERGY ACCELERATOR RESEARCH ORGANISATION (JAPAN)